「あなたはわたしのがけらを持っている。わたしはあなたのがけらを持っている」高畑早苗

男性優位文化の歴史の中に、女性アーティストはどこに、どのように存在したのだろう?女性 の自画像から女性アーティストの表現を読み取ってみたい。″女性とアート″フロジェクトの深潭 純子さんによる隔月の連載。

東京の下町、古いビルの一室、油絵の具のにおいがする高畑さんのアトリエは、11月の個展で飾 る作品をはじめ、たくさんの作品が輝いていた。作家のアトリエは本当にわくわくする。キャンバ スだけでなく、オブジェもあり、それは何?と次々に聞きたくなる。

高畑早苗さんは、1959年群馬県生まれの女性画家。70年代末、18歳で画家としてパリにデビ ュー、その後アメリカに移住し、ヨーロッパやアメリカ、日本で作品を発表し続ける。80年代末に 日本に帰国したが、日本社会のどこにも属していない、その空白を埋めるかのように、それまで彼 女が移り庄んできたところで知り合った友人たちを訪ねてインタビューし描いた17点のシリーズ、 「Intimate Reflections 1991‐1995 生まれ出た自画像たち」を制作。当時、自分以外の人を描いていても「自画像」である、という彼女のコメントにハッとした。それま で誰にも分かってもらえなかった私の感覚と似ていたからだ。長いインタビューを経て描かれた像 は、自分が深く関与しているという意味でも「自分」の像である。自画像とは外貌を描くことでは ないのだから(※)。

20世紀が終わるころから、彼女は自分の内面に深く分け入り探求することを始める。絵と全く関 係のない社会に身を置いて仕事をし、絵を描かずにひたすら額縁を作っていた。そのころわいてき たイメージを後で描いたのが、右の写真の自画像である。髪を逆立てた半ズボンの自画像、生命の 火、そして光を発して爆発する赤やオレンジの渦巻く世界。「このイメージをいつか描くために、自分は生きていよう と思った」というこの3点の、どれも、彼女の見ている世界、そして自画像でもあ る。

「WEARME‐無意識の鎧、意識の兜」(2001〜06年)は、06年に東京と京都の法然院、08年に 香港で展覧会が行われた。等身大の白いシンプルなドレスとヘッドピースを、色彩とビーズで彩 った立体作品がたくさんならんだ不思議な美しい世界である。このタイトルのとおり、「私」という 身体や内面は、すべてドレスと兜という表相に昇華されてしまったかのようだ。中は空である。

11月に東京で開かれる高畑さんの個展は、「再び 生まれ出た私」の自画像シリー・ズVol1.「Intimate Reflections 2006‐2008 ; The Spell and The Buterflies 蝶蝶と呪文」と題され、再生した 彼女の姿を、あでやかな作品群で見せてくれるは ずだ。

※『あ・な・た・た・ち−自我からの癒し』上野 千鶴子・文/高畑早苗・絵(NHK出版)

ふかざわじゅんこ ゛女性とアード'プロジェクトメンバー。1989年まで多摩美術大学グラフィ ックデザイン科研究室助手。現在、ヒューマンサービスセンター事務局、神奈川 大学非常勤講師。ジェンダーとアート、メディアについて、講演、ワークショッ プや調査研究を行う。

ふぇみん 2008年10月15日発行 第2871号から